ダ ル メ シ ア ン の 毛 色 と 聴 覚 障 害

 1. ダルダル雑学〜毛色の成り立ち(遺伝子の影響)  2. 先天性聴覚障害〜毛色との関連・繁殖について
 3. 繁殖者の責任〜考えて行かねばならない事  4. 聴覚障害を持つ犬のトレーニングについて


2. 先天性聴覚障害〜毛色との関連・繁殖について
 犬における先天性の聴覚障害の研究では、毛色(特に白色)や虹彩の色(特にブルー)に関する遺伝子が障害の発生に関連していると言われています。
ダルメシアンで白地を作り出すPiebald遺伝子も聴覚障害と関連があると言われています。Piebald遺伝子の発現が強いと聴覚障害の出る確率が高いようです。逆に言えば図5のようにPiebald遺伝子の発現が弱い場合は聴覚障害の発生率が大変低いという研究結果もあるそうです。しかし、犬種のスタンダードという面から見ると図5のように大きな斑の入ったものは好ましくないとされているので一般的には繁殖から外されることとなります。つまり聴覚障害という面から考えればPiebald遺伝子の発現を弱めたい一方で、水玉模様という特有の柄をきれいに現すためにはPiebald遺伝子の発現を弱められないというジレンマが生じるわけです。
又ある研究では、両耳に障害がある犬同士の交配よりも、片親が片耳に障害を持つ場合の方が生まれて来る仔犬に聴覚障害が多く発生するという研究データも得られているようです。ということは、極力片耳に障害を持つ犬を繁殖から外していくべきだと言えるのではないでしょうか。もちろんこれは遺伝性の障害なのですから、両耳が聞こえない犬も繁殖から外した方がいいのでしょう。
 ただ、障害のある犬から必ず障害のある仔犬が生まれるかと言うとそんなことはありません。ダルメシアンの先天性の聴覚障害は他の複数の遺伝子も関わる複雑な仕組みから起こるものであり、どの犬を繁殖すべきか、あるいは繁殖に使うべきでないかはとても難しい問題だと思います。
毛色以外ではブルーアイのダルメシアンに聴覚障害が発生し易い事が分かっており、研究されている様です。
繁殖を考えた時に問題になってくるのは、「繁殖に使おうと思っている犬の耳が聞こえているかどうか」をどのように判定するかという点です。両耳が聞こえない場合は日常生活の上で音に対して反応がないことにオーナーが気付きやすいのですが、片耳が聞こえない場合は注意していないと気付かない事も多い様です。それでも注意深く観察していれば、音に対してどこから聞こえるかがはっきりわからずに音源の方向を探すような行動をとったりするそうです。
 獣医学的には、アメリカなどではBAEP(脳幹―聴覚誘導電位)といって、聴覚刺激に対する電気電位を測定する方法がとられているそうですが、日本ではまだ一般的ではないようです。この方法は生後6週齢から行なうことができ、聞こえるかどうかを数値的に判定する事が出来るので、日本でももっと普及してくれることを望みます。